「街場のメディア論」を読み、ひとつ感じたこと。

読もうと思いつつ発売から時間が経ちすぎてしまったが、やっと内田樹氏の「街場のメディア論」を読んだ。

発信側・受け手側の問題、著作権に対する考え、電子書籍に関してのことなど、内容が多岐にわたっており、とても新書とは思えないほど充実した一冊だった。というか、書かれていたいずれの課題も、雑誌やWebメディアに関わってきた人間として改めて考えておかなければならないと思わせてくれた。

そんな一冊なので、一箇所だけ抽出して「ここが最も良かった」なんてことはいいづらいが、ひとつだけ自分に最も刺さったところをあげておく。

それは「レベルが下の読み手に合わせて出版物を作るべきではない」ということ。

より読者層を広げるべく、レベルの低い読者に合わせて出版物を作っていると、それまで読んでいてくれた読者の満足度を下げることとなる。すると結果として、読者が愛想を尽かして離れていってしまう。

これは自分の雑誌やWebのメディアに関わってきた人間だけによくわかる。編集者として制作していたころ、内容は出来る限り初心者向けにし、表現はとことんわかりやすくしていた。その結果、ある程度、知識などを持った人からの不評は確かにあった。しかし、一番下のレベルに合わせるのは発信側の義務だと信じて疑っていなかった。

とはいいつつ、レベルの低さに不評を訴える読者の気持ちも、重々わかっていたんだよね。でも、それを言い出すことは、周りの空気が許してくれなかった。きっと今も既存メディア作りをしている人の多くは同じような気持ちなんだろうなー。そして状況もあまり変わっていないんだろうね。

その結果が現在の読者離れが止まらない状態…。

それだけに今こそ、読者というターゲットをもっとしっかり見つめ、蔑ろにしないようにしないとね。そうしないと、本当に取り返しの付かないことになるから…。


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